境界、筆界とは?|不動産売却豆知識(第2回)
2023/12/142024/02/19
不動産には専門的な知識や用語が多く、一般のお客様には特にわかりにくいと思います。
本ブログ内では、「不動産売却豆知識」シリーズとして、不動産取引に役立つ豆知識を解説します。
不動産取引に役立つ豆知識を解説していく不定期更新シリーズの第2回!
「境界、筆界とは?」をテーマに、土地の境界について解説します。
多くの不動産売買契約書には、「売主の境界明示義務」が契約条項に入っています。
買主にとって、購入する土地の隣地との境界はどこなのか、きちんと売主に明示してもらうことはとても重要になります。
境界とは?
境界とは、「法的な境界」と一般的に「日常用語として使われる境界」とは異なります。
不動産取引上、多くの場合は「法的な境界」を筆界、「日常用語として使われる境界」を境界として用いられます。
本ブログでは、「筆界」=法的な境界、「境界」=日常用語として使われる境界として解説します。
<筆界(法的な境界)とは?>
筆界とは、「2個の土地の境、すなわち2個の土地を分断する観念的な線のことをいい、客観的に固有のもので当事者間の合意によって勝手に線を引くことはできない」(最判昭31-12-28判タ67.68)と判例で示されています。
この判例によると、不動産の境界は、不動産登記簿上の一筆の土地の境界を指すため、1つの土地として登記をされると、客観的に土地の境界が定められるはずであるから、私人間の合意のみによって自由に変更することができないということになります。
私人間で合意した境界と筆界とを合致させるためには、分筆登記や合筆登記を行う必要があります。
<境界(日常用語として使われる境界)とは?>
境界とは、所有権や借地権の範囲を画す線という意味です。所有権の範囲であれば、私人間の合意で自由に決めることができます。
例えば、ある土地の境界を隣地所有者同士で決めることができたり、土地の一部を譲渡したり、時効取得したりすることができるのです。
隣地同士で作成される「境界確認書」は、法的な境界を示したものではなく、正確には所有権の範囲を示したものになるのです。
<境界確認書とは?>
境界確認書は、土地の境界がどこなのか、隣接するすべての土地の所有者(道路や水路がある場合は、道路所有者や水利組合、土地改良区なども)が現地にて立ち合い、土地家屋調査士によって測量された境界を確認し、土地家屋調査士によって作成されます。
境界確認書は、それぞれの土地所有者が1部ずつ保管しますが、「土地を譲渡等するときは、土地と共に本書を譲受人に引き渡し、本書における地位を継承させるものとする」といった文言を入れ、土地が譲渡された場合は、土地の引き渡しとあわせて境界確認書も引き渡します。
この境界確認書は、分筆登記や合筆登記、地積更正登記を行う際に法務局へ提出する必要があります。
<境界確認書の効力とは?>
境界確認書の効力は、私人間の合意によって作成されているものであるから、その効力は当事者間のみで有効となります。
境界確認書の境界と不動産登記簿上の境界(法的な境界)とが相違したとしても、不動産登記簿上の境界は移動することはありません。
そのため、境界確認書があったとしても、境界確認書の境界と不動産登記簿上の境界とが相違していた場合、争いの余地は残ることになります。
しかし、境界確認書があれば、境界確定訴訟を提訴されたとしても、当事者間で過去に所有権の範囲の確認をした証明ができるため、万が一、境界確定裁判において定められた真の境界が境界確認書の境界と別に定められたとしても、所有権の範囲には影響は与えないものと考えられます。
境界確認書を作るということは、将来の境界紛争を予防する効果があると考えられます。
<売主の境界明示義務とは?>
売主の境界明示義務とは、どこまでを指すのでしょうか。
弊社も加入している公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会の不動産売買契約書では、「売主は、買主に本物件引渡しのときまでに、隣地との境界を現地において明示する。」とされています。
境界確認書があり、その境界確認書通りに境界杭が設置されている場合は、売主と買主の現地確認で足りるでしょう。
しかし、境界確認書に示された境界杭がない場合や、境界確認書はないが境界杭がある場合などは、売主と買主だけではなく、隣地所有者にも立ち合いを協力してもらい境界を明示することが必要でしょう。
境界確認書、境界杭ともにない場合は、土地家屋調査士に依頼し境界確認書を作成する必要があります。
ただし、境界確認書作成には費用が掛かるため、作成しない場合は、「境界について正確に確認できていない」旨、買主に正確に伝え承諾を得る必要があります。
<境界明示における不動産仲介業者の義務とは?>
昭和61年11月18日大阪高裁にて、「媒介業者が、住宅建築目的の土地建物の売買において、境界確定を求められながら、売主代理人の言を軽信して、隣地所有者が関知しないまま境界杭を打ったことには、調査注意義務違反がある。」との判例が出されています。
仲介業者としては、売主にヒアリングすることはもちろんですが、隣地所有者も交え境界確認をする必要があります。
また、買主がどこまでの境界確認を求めているか、売主がそれに応じるのか調整の上、境界の現状について明確に買主に説明する必要があるでしょう。
<まとめ>
不動産取引において、境界の明示は大変重要です。
境界確認書があれば、買主は安心して土地を購入することができます。
ただし、境界確認書を作成するには売主に費用負担が生じるため、作成しないケースも多くあります。
境界確認書がない場合、現地に境界杭があったとしても、売主、買主、隣接地所有者立ち合いのもとで境界の確認をする必要があるでしょう。
境界が不明な場合、境界の認識が隣地所有者と相違している場合などは、買主にきちんと伝えたうえで、買主に購入の意思があるか確認する必要があるでしょう。
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<この記事の執筆者>
株式会社ながろ不動産
愛媛県松山市本町6-6-7 ロータリー本町306号
代表取締役 長櫓 陽光(ながろ ようこう)
宅地建物取引士
行政書士(愛媛県行政書士会所属)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
不動産業界歴10年以上
電話番号 : 089-994-6393
FAX番号 : 089-994-6394
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