現状有姿で引渡しとは?契約不適合責任との関係|不動産売却豆知識(第28回)
2024/03/012024/03/01
不動産には専門的な知識や用語が多く、一般のお客様には特にわかりにくいと思います。
本ブログ内では、「不動産売却豆知識」シリーズとして、不動産取引に役立つ豆知識を解説します。
不動産取引に役立つ豆知識を解説していく不定期更新シリーズの第28回!
不動産売買契約の中で、「現状有姿」という用語が頻繫に使われます。
今回は、「現状有姿」という専門用語について解説します。
<現状有姿とは>
現状有姿とは、法的に明確な規定があるわけではなく、不動産取引でよく使われる用語ですが、過去の判例で「一般に現状有姿売買とは、契約後引渡しまでに目的物の状況に変化があったとしても、売主は引渡し時の状況のまま引き渡す責務を負担しているに過ぎない」と示されています。
簡単にいえば、引渡しに際して、売買契約締結後に新たな修繕やリフォームを行う必要はなくそのまま引渡せば良いと規定しているのが現状有姿条項となります。
中古戸建や中古マンションの売却の場合には、使用に伴う損傷や経年劣化がある場合でもそのままでの引渡しをすれば良いとなります。
<現状有姿取引では契約不適合責任は免責されるのか>
現状有姿条項がある場合であったとしても、売主の契約不適合責任が免責されるわけではありません。
契約不適合責任については、「不動産売却時の売主の契約不適合責任とは?」にて解説しております。ご参照ください。
例えば、中古戸建を現状有姿にて引渡す旨の条項を付け売却をした際、売主の契約不適合責任を免責していない場合、引渡し後に雨漏りが発覚した場合には売主は契約不適合責任を負います。
なぜなら、現状有姿条項は、単に売主は引渡し時の状況のまま引渡す責務を規定しているに過ぎず、雨漏りがしている中古住宅が売買契約の引渡すことを予定としていた目的物とは言えないためです。
過去の判例でも、「売主は、現状有姿条項により建物を現状融資の状態で引渡せばよいとされる結果、建物について隠れた瑕疵が存在する場合、そのまま引渡せばよいが、経年劣化によらない隠れた瑕疵が存在することが明らかになった場合は担保責任を負う趣旨と解するのが相当である」としています。
この判決は、民法改正前の売主の瑕疵担保責任に対しての判決ですが、民法改正後の契約不適合責任についても同じ判断になります。
売主の契約不適合責任を免責としたい場合には、現状有姿条項とは別に、「契約不適合責任を免責する旨」の条項が必要となります。
<契約不適合責任を免責する例文>
私が過去に取引した築26年を経過するマンションの契約不適合責任を免責した特約条項をご紹介しますので、参考にしてください。
本物件は築後26年経過しており、買主は居住目的で本物件を購入するものであるが、建物状況調査は行われていないこと。売主が把握している状況は別紙告知書及び設備表記載のとおりであるが、建築時の図面と適合しない可能性、現在の法律に適合されていない可能性、基本構造部分の腐食の可能性、配管の腐食、劣化、詰まりの可能性があること。買主は、それらを前提とした本契約書所定の代金で本物件を現状にて購入することを承諾していること。よって、引渡し後に自然損耗、経年劣化による劣化・腐食等と原因として仮に雨漏れ、水漏れ、設備関係の故障、その他、上記記載事項等が発覚したとしても、それらは契約の内容に適合しない場合の売主の責任に該当するものではなく、本契約書第19条(契約不適合責任)の規定にかかわらず、売主の契約不適合責任に関しては免責とし、買主は売主に対し、本物件に関し、契約不適合を理由とする追完請求、代金減額請求、契約解除、損害賠償請求等の一切の請求をすることができないこと。
<まとめ>
現状有姿という言葉は、一見、物件を現状のまま引渡せば、それ以上の責任は負う必要がないと勘違いされがちです。
しかし、売主の契約不適合責任は民法で規定されている責任であり、契約書の条項で打ち消さない限り、売主に当然課せられる責任となります。
売主の契約不適合責任を免責にする場合、契約書の「特約条項」で打ち消すことになります。
不動産会社の中でも、「現状有姿条項」と「契約不適合責任免責」の違いをきちんと説明できる人は少ないように思います。
不動産を売却する際は、「現状有姿条項があったとしても、契約不適合責任は免責されていない」ことは十分理解した上で契約を結ぶようにしてください。
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<この記事の執筆者>
株式会社ながろ不動産
愛媛県松山市本町6-6-7 ロータリー本町306号
代表取締役 長櫓 陽光(ながろ ようこう)
宅地建物取引士
行政書士(愛媛県行政書士会所属)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
不動産業界歴10年以上
電話番号 : 089-994-6393
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