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建物の傾きについての調査説明義務とは?|不動産売却豆知識(第49回)

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建物の傾きについての調査説明義務とは?|不動産売却豆知識(第49回)

建物の傾きについての調査説明義務とは?|不動産売却豆知識(第49回)

2024/05/242024/05/24

不動産には専門的な知識や用語が多く、一般のお客様には特にわかりにくいと思います。

本ブログ内では、「不動産売却豆知識」シリーズとして、不動産取引に役立つ豆知識を解説します。

不動産取引に役立つ豆知識を解説していく不定期更新シリーズの第49回!

 

今回は、「建物の傾きについての説明義務」をテーマに、建物を売却する場合、建物の傾きについて売主はどこまで説明義務があるのか解説します。

 

<建物の傾きについて>

建物の傾きは、建物の構造上の問題軟弱地盤による地盤沈下地震による地盤のズレ床自体の劣化など様々な原因で引き起こされます

多くの場合は、軟弱地盤の土地に対し、地質改良を十分に行わず建物を建築することによる地耐力不足が原因です。

建物の傾きは、建物の強度不足による建物の倒壊の恐れだけでなく、傾いた建物で生活することによって健康被害を起こす原因にもなります。

 

不動産を売却する際に、その建物の傾きについて認識している場合には、告知義務がありますので、必ず買主に説明する必要があります。

故意過失があり、建物の傾きについて買主に対し、説明を怠った場合には説明義務違反として損害賠償請求の対象となりますので注意が必要です。

 

<説明義務の範囲とは>

では、建物の傾きについて、売主はどこまで調査し説明する義務があるのでしょうか。

軟弱地盤については、「軟弱地盤の土地を売却する際の注意点」でも解説しているとおり、売却時に売主による地盤調査までは求められていません。

建物の傾きについても同様で、一般的には住宅診断などの専門家による調査までは求められていません。

建築について専門知識のない売主であっても、認識できる程度の建物の傾きがある場合には説明義務があるでしょう。

 

<過去の判例>

 

建物の傾きについての説明義務違反について争われた過去の判例をご紹介します。

 

東京地裁平成25年3月22日判決

【事案】

中古住宅を購入した買主が、引渡し後まもなく地盤が不安定で建物に傾きやひびが発生しているとして、売主および売買を仲介した不動産業者に対し、調査説明義務違反による不法行為ないし債務不履行による損害賠償請求を求めた。

また、売主に対し、錯誤無効による契約無効を訴えた。

 

【判決】

本件傾きを瑕疵と認め、売主および仲介業者の説明義務違反による損害賠償請求を認めた。

その一方、本件傾きは建物の建て替えを必要とするまでのものではなく、錯誤による契約無効は認めなかった。

 

【判決の要旨】

売却した敷地は締固めが不十分で、極端に軟弱で支持力をほとんどないことが原因で、建物の傾きが生じていた。

実際に、壁面のひび割れや床の傾き、出窓障子の建付けの歪み、扉の傾きなど、建築について専門的な知識のない者でも容易に確認できる不具合が生じていた。

これらの不具合を売主が認識していなかったとは考えづらく、売主には建物の傾きについて説明義務があったとされた。

また、仲介業者についても、不動産を仲介するにあたり、建物内部の調査を積極的に行っておらず、これらの不具合を認識することができなかったことは過失があると認められた。

 

<判例からわかること>

建築についての専門的な知識がないものでも、容易に認識できる建物の傾きや歪みについては、売主及び不動産を仲介する不動産会社は買主に対して、調査説明義務があります。

不動産を売却する際には、認識している不具合については、必ず買主に説明した上で重要事項説明書や契約書の特約条項に記載しておきましょう。

また、不動産会社に売却を依頼する場合には、不動産会社が建物についてどれだけ事前に調査をしているか確認し、買主に説明する内容に相違や不足がないか確認しておきましょう。

 

<簡易的に傾きを確認する方法>

建物の傾きからくる違和感の感じ方は、個人差があります。

そこで私が戸建てなどの不動産売却の依頼をいただいた際に、建物の傾きについて行っている簡易的な調査方法を解説します。

 

1.ビー玉を転がす、水平器を利用する。

ビー玉などを転がしたり、水平器を使用することで、床の傾きの有無を確認することができます。

床に傾きがあったとしても、建物が傾いているとは限らず、床がたわんでいるだけのこともあります。

 

2.下げ振りを使用する。

下げ振りを使用し、柱や壁が地面に対して垂直になっているか確認します。

 

これらの方法は、専門的な知識がなくても簡単に建物の傾きや床の歪みを確認することができます。

不動産売却をする際には、念のためこれらの簡易的な調査は行っておきましょう。

 

 

<まとめ>

不動産売却時の「建物の傾き」についての調査説明義務は、軟弱地盤の説明義務と同様に、専門的知識のない人でも容易に認識できる不具合については、買主に説明していなかった場合、調査説明義務違反として責任を問われます。

認識している物件の不具合は必ず不動産会社に伝え重要事項説明書や契約書に記載し、買主に説明するようにしましょう。

また、水平器や下げ振りを使用した簡易的な調査は、売却を依頼する不動産会社には必ずおこなってもらいましょう。

 

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<この記事の執筆者>

株式会社ながろ不動産
愛媛県松山市本町6-6-7 ロータリー本町306号

代表取締役 長櫓 陽光(ながろ ようこう)

宅地建物取引士

行政書士(愛媛県行政書士会所属)

2級ファイナンシャルプランニング技能士

不動産業界歴10年以上

電話番号 : 089-994-6393
FAX番号 : 089-994-6394


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