遺産の一部を先に不動産売却することはできるか?
2024/02/142024/02/14
被相続人が亡くなると、相続が発生します。
相続人が多かったり、遺産が多い場合など、遺産分割協議の成立には時間がかかることがあります。
遺産分割協議が成立する前に一部の不動産を売却することはできるのでしょうか。
今回は、遺産の一部である不動産を先に売却できるのか解説いたします。
<ケース>
Aの父は、生前、第三者Xとの間でAが所有する不動産を売却する契約を締結していました。
不動産売却の契約後、引渡し前までにAは死亡していまいました。
Aは弟Bと共に父の遺産を相続しましたが、引渡しの期日が近づいてきましたが遺産分割協議がまとまりません。
このままでは不動産の引渡しができず、Xから不動産売買契約に基づき違約金を請求される恐れがあります。
遺産分割協議がまとまる前に一部財産の不動産売却はできるのでしょうか。
<遺産の一部先行処分の可否>
民法907条で、「共同相続人は、いつでも、その協議(遺産分割協議)で、遺産の全部または一部の分割をすることができる」と規定されており、遺産の一部を先行して分割処分することは可能です。
また、民法908条にて「遺産の一部の分割について協議が整わない場合、または協議をすることができないときは、共同相続人は、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合を除く、家庭裁判所に遺産の一部のみの分割を請求することができる」とされています。
ケースの場合、相続人AとBの遺産の一部の不動産売却について、遺産分割協議がまとまれば先行して不動産売却が可能となります。
また、遺産分割協議がまとまらない場合、AまたはBは、家庭裁判所に遺産の一部の不動産売却について請求可能となります。ただし、家庭裁判所に請求をして他の相続人の利益を害するおそれのある場合はできません。
<遺産分割協議書への記載方法>
遺産の一部の不動産売却について、遺産分割協議がまとまると遺産分割協議書を作成します。
この場合の遺産分割協議書は、遺産の一部の分割のためだけの協議書であるため、遺産の一部の分割協議である旨を明確に記載することが重要となります。
◎例文(冒頭に記載すると良いでしょう)
被相続人〇〇の子である、共同相続人A及びB、被相続人の遺産の一部について遺産分割協議を行い、本書のとおり合意する。
また、この遺産の一部の分割が残余財産の分割に影響を及ぼすか否かを明確に記載することも重要です。
◎例文
残余遺産について
A及びBは、本遺産分割協議書記載の遺産を除く、残余遺産については、改めて分割協議を行うものとする。
<まとめ>
稀ではありますが、不動産売却の契約後に売主が亡くなるケースがあります。
このような場合は、不動産売却の対象となる遺産についてのみ遺産分割協議を行い、不動産の引渡しを進めた方が良いでしょう。
私も過去に、不動産売買契約と引渡しの間に売主様がお亡くなりになったケースが2件ありました。
1件は、不動産売却の対象となった不動産のみをまず遺産分割協議を行い、不動産の引渡しを完了しました。
もう1件は、売主様に多額の借入金があったため、相続人が相続放棄をされ不動産の引渡しとはなりませんでした。
不動産売買契約後にお亡くなりになり、不動産の引渡しができなくなった場合、相続人は買主から債務不履行に基づく違約金を請求されます。
相続人が被相続人が不動産売却をしていた事実を知らなかった場合、対応が遅れたり、不動産の引渡しができない場合もありますので、不動産売却についてはご家族で共有しておく必要があるでしょう。
株式会社ながろ不動産では、不動産相続についてのご相談を承っております。
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<この記事の執筆者>
株式会社ながろ不動産
愛媛県松山市本町6-6-7 ロータリー本町306号
代表取締役 長櫓 陽光(ながろ ようこう)
宅地建物取引士
行政書士(愛媛県行政書士会所属)
2級ファイナンシャルプランニング技能士
不動産業界歴10年以上
電話番号 : 089-994-6393
FAX番号 : 089-994-6394
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